Paca Kajero

うちの菜園の状況などを徒然に

北海道のシカ問題(2009.4.8)

北海道では車を運転しているとシカ(エゾシカ)をよく見かける。
ここ清水では、秋口に畑の作物を狙いに山(日高山脈)から降りてくるシカを多く目撃するとともに、
昨日隣町の新得の山の方に行った際には数100頭を数えるシカ目撃した(写真1枚目)。

エゾシカは夏の生息地と冬の越冬地が異なり、春秋で100kmほどなら移動する動物だが、
標高差の激しいこのあたりでは、横の移動ではなく、縦の移動となるのかもしれない。

今でこそ多いこのエゾシカだが、明治時代には乱獲と厳冬が重なり、絶滅寸前まで個体数が減っている。
それが保護対策の後、現在のように北海道のどこでも見ることのできる動物となっている。

このシカだが、道外からの観光客にこそ人気があるが、増えすぎている現在、北海道では各地で被害をもたらしている。
1つには、畑もしくは家畜の飼料への被害。先の新得でのシカも放牧地まで降り、ひどい固体は牛の飼料であるサイレージにまで手を出していた。当園でも過去に収穫前の大豆が根こそぎやられたことがあり、人事ではない。
また、その大きさにより、列車または車との衝突により引き起こされる被害も甚大である。

もともと北海道には、シカの天敵であるニホンオオカミが生息しており、その捕食によりバランスが保たれていた。しかし、家畜、そしてヒトに被害を与える害獣としてオオカミが駆除、絶滅させられたことにより、現在のシカ天国の状況がある。

このシカの個体数をコントロールする手段として、
1.狩猟による個体数コントロール
2.1部上項目と連動するが、シカ肉,皮の利用促進
3.避妊による個体数コントロール
4.天敵であるハイイロオオカミの導入による個体数コントロール
などが実施、あるいは考案されている。

1.は従来から行われているが、追いついていないこと、狩猟範囲が限られざるを得ないことから(ヒトの生活区域で銃を撃たれたらそれこそ問題)、決定的な対策となっていない。2.はどちらかというと啓蒙やイベント的。3.は今後永久的に実施していかなければいけないので実施と経済性で難がある。4.はハブに対するマングースの例をあげるまでも無く、人為的な天敵導入による固体数のコントロールは、失敗、もしくは対象外の動植物、そしてヒトに対する不測の影響を及ぼすことが多々あるため非常に難しいと思われる。今度はオオカミの数のコントロールもしなければいけないことになりかねない。

それではどうしたら? という話になるが。。。
基本的には「干渉せず」が最も良い策と考える。最も現在ヒトの生活している区域へ与える被害は最低限に抑える必要があるだろう。この区域に侵入してくる個体は狩る必要もあるかもしれない。しかし、山岳部含め北海道全域のシカの固体数の管理を未来永劫実施していくことは不可能であろう。
シカの増加により生態系のバランスは崩され、いくつかの動植物は絶滅の憂目にあうかもしれない。しかし、それはオオカミを絶滅させた時に決まった摂理と思われる。

ヒトが自然をコントロールしよう、できると思うのは(少なくとも現時点の知見では)傲慢であろう。
ヒトは無知であることをしらなければならない。「順応的管理」などという言葉がはやっているが、「人為的」な介入がこれまで状況を加速度的に悪くしてきていることは事実であり、いくらフィードバックさせるといっても、さかんに行われている「自然再生事業」と同様、エゴと欺瞞に満ちている気がする。

  ryo