Paca Kajero

うちの菜園の状況などを徒然に

少量多品目栽培について

先日有機ネットの交流会で、
「なぜ、有機農家/自然農家で多品目栽培を行う人が多いのか?」
という質問がありました。


なぜか、そのときには多品目栽培で無いMさんが、
・病害虫の伝染防止
コンパニオンプランツ
・生産者が楽しめる
というような回答をしていたと思います。


有機農法や慣行農法に貴賎が無いように、
品目を絞っての栽培や、多品目栽培のどちらが尊い、ということはないのですが、
そしてMさんの回答ももちろんそのとおりなのですが、
多品目栽培をやっている身から、補足(蛇足?)をしてみます。


以下、僕の今現在での少量多品目栽培を選択している理由です。


1.病害虫の伝染防止(コンパニオンプランツ)
Mさんの回答と同じですが、有機農家として農薬を使用しないで栽培する場合には、
一番やっかいなのが病害虫です。
どんなに手をかけて栽培していても、病気が広がり、虫が大発生すると、
忌避材や資材の利用には限度があり、単一作物を栽培している場合、
へたをするとその年の収穫物が0ということになりかねません。
植物の科が近いほど、同じ病害虫による被害が広がる可能性があるため、
アブラナ科同士を隣り合わせないなどの対策が可能です。
もちろん相性の良い植物同士を隣り合わせに植えること(コンパニオンプランツ)や、
通常の株間より離して餓える(疎植)などの他の対策も同時に採ります。


2.土壌のソイルバランスの維持、病害虫の防止
益虫害虫、そして益のあるバクテリア、害のあるバクテリアによらず、
多くの生物は特異性があるため、
単一作物を栽培した場合、その生育に関連する生物/微生物にバランスが偏り、
生態相が単純化することから、外的撹乱に弱く、病害虫が発生しやすくなります。
前後しましたが、単一作物を生育することにより、土壌中の成分も偏り、
もちろんこれに関しては、必要なものを投資する、という考え方でも、
おおまかで短期的なサイクルでは問題ないのですが、
微量要素とそれ以外、そしてその補完についての知見が十分でない状態では問題が生じる可能性がありますし、
永続的に外部からの物資を投入し続けます、
という考え方は、マクロ的な物資の循環という面では疑問が残るとともに、
経済性や、安全保障上の問題も絡み、未来永劫安定的に多投資多収益型の農法が続けられる保障は無いです。
被覆作物を用いたり(草生栽培)、
必要最低限の雑草を取る(ある程度の雑草を取らない)という考え方も同様の理由です。


3.リスクヘッジ
病害虫の伝染防止に絡みますが、品目を絞って栽培し、
対象の作物が病害虫、その年の天候等人的要因以外で明らかに収量が減る可能性がある場合、
化学農薬による防除ができない有機/自然栽培は明らかに不利です。
(もちろん、最悪の場合のみ最低限の農薬を使うという考えもあり、
それはそれでかまわないと思いますが、
思想的に、経済性を優先し、どっかで許容しちゃうような人なら、
その甘えは作物の味にも出るんじゃないかと思いますし、
そんな分かり難いことをするのなら最初からある程度の農薬を許容して使えば良いのにと思います)
多品目を栽培する場合、それぞれの作物に、
乾燥でも生育の良いもの、雨があっても良いもの、
温度が必要なもの、低温が得意なもの、
と特徴が分れるため、トータルでの有る程度の安定した収量を期待することが出来ます。


***


ここまでがおそらく有機/自然栽培で少量多品目を選択する優位点だと思われますが、
単に問題の多く指摘されるモノカルチャーのアンチテーゼとして行っている場合もあるでしょうし、
生産者それぞれによってまちまちでしょう。


僕自身は、食物を核とした「細く長いコミュニティー」を提唱しているので、
上記の理由のほか、


4.持続可能な、食糧生産と消費者との結びつき
という面もあります。
つまり、カボチャならカボチャだけを作るのではなく、
多くの品目をそれぞれの季節季節で出すことが出来る状態を作ることにより、
うちの野菜を使ってくれているお客さんの食卓には常にうちの野菜をあげることが可能な状態、
を作り出すことができます。
もちろん、実際はそんなコアなお客さんはごく一部ですし、
うちの野菜だけを使わなくても全くかまわないのですが、
有機認証という制度ではなく、
人と人のつながりによって、生きるために必要な食物を生産し、使ってもらう、
そしてその流れを社会システムから独立させることによって、
ニンゲン本来の「自立した」生活が築けるものだと思っています。


なにか社会問題に対して、デモや署名するのももちろん良いです。


が、マスコミや、政治、情報や、慣習、人の強い言葉や、宗教、そのた雑多なものから自立し、
個人が真の意味で自立して考え、判断し、自分や家族の生活とともに周囲の環境とともに発展していく、
方法の一つだと思っています。


  ryo