Paca Kajero

うちの菜園の状況などを徒然に

ペレットは大丈夫か?(2009.2.5)

近頃話題となっているペレット、木屑を成分であるリグニンを使って固化したもので、所謂「バイオマスエネルギー」として注目を集め、各地で環境負荷のかからないエネルギーとしてキャンペーンがはられています。ここ十勝では足寄町が2005年より廃校を利用したペレット製造工場を建造し、先駆的に導入を進めています。

しかし、このペレット、本当に有効な新エネルギーなのでしょうか?足寄町のケースで少し考えてみることにします。以下公表されている資料より、

検討段階***

・・・年間2,000トンのペレットを生産・販売し、製造施設に掛かる建設費の75%の補助が得られた場合は採算ベースに乗る見通しが明らかになった。(十勝毎日新聞,2004,2,19)

(終了)***

残念ながら検討時の資料は数年前にはネットで見ることができたのですが、今はなくなっていました…(!)3/4が国の補助金によるエネルギー検討と経済性の算出、おかしくはないでしょうか?
まだ、それでもいいです。蓋を開けて見ると…

実際の工場スペック***

・・・製造プラント導入にかかる事業費は7,000万円で、自己資金2,000万円、国や町からの補助金5,000万円を充てる計画。生産規模は年間700トン。(十勝毎日新聞,2004,12,15)

(終了)***

と、補助金の割合は変わらずに、生産規模だけは大幅にトーンダウン。そして、

実際の生産量***

136トン(2005年度)、186トン(2007年度4月〜10月)・・・いずれも帯広開発建設部発表
2007年7月−2008年6月期の生産量は550トン(見込み) (十勝毎日新聞,2008,6,3)
としているが、しかし、生産したペレットのうち約300トンは同町舎でボイラー燃料として使用しています。つまり官が助成して民で作らせたものを再度官が使用しているわけです。足寄町の場合には街づくり(村おこし)的な面が多分にあるので、全て否定というわけではありませんが、これを即「エコ」としてマスコミあるいは役所が広報することはいかがなと思うわけです。お金をかけてエネルギー利用し、エコだといえるのなら、極論、木質であるならばガス化でもエタノール化でもいいわけです。アホみたいにお金がかかりますが。

需要量が伸びない理由は、
・ペレット自体の経済性
※ペレット価格は小売価格63円/kg(足寄町産)、一方灯油は2009年1月現在約70円(配達価格、財.石油情報センター)、ペレットの発熱量は灯油の約半分なので、約倍程度の差がある。
ペレットストーブの価格(最も安いものでも10万程度、高いものでは70万程度)
※工事費(設置費)込みの価格かどうかは不明
・ペレットの貯蔵性(発熱量で約3倍だが、空隙入れるとさらにスペースが必要)
・性質が均質でなく、ストーブにより使用できるペレットが限られる場合もある
・実は意外と灰が出る
というところでしょうか?このうち北海道ではストーブ導入に1/2(10万上限)の補助金が出ますが、プルサーマルの話と同様、生産施設を整備してから、需要が伸びず、末端の整備を泥縄式に行うというのでは、あまりにもおそまつです。

しかしペレットの問題は他にあると思います。<補助金に依存したペレット 安定的な供給が将来にわたり可能か?>
ところで、このペレット、今「新エネルギー」としていろいろ売り出していますが、実はかなり前からあったもので、かつて石油ショック(第二次)のあとに林野庁通産省が助成制度を作り、日本各地で製造施設が作られていたことがありました(26施設、生産量28,000トン,1984)。ですが、結局下落した石油価格との競争に耐えられず、2001年には3工場2,300トンまで落ち込んでしまいます。現在はペレットブームにより、過去のピークを越す生産量まで回復していますが(32,600トン,2007)、補助金にその行方の多くを委ねる生産に不安を覚えます。<事業の採算性・継続性が未知数>
「石油価格が上昇し、将来的には採算が取れる」と楽観視する声が多々あるようですが、本来、それは検討段階にやっておくことであって、事業として始めた後から言う言葉ではありません。しかも、原料となる木材価格も中国での需要増加に伴い上昇し、また、当然運搬,施設稼動には石油燃料も使用しているので、一概にすぐに逆転するという状況でもないようです。
確かに未利用の間伐材は多量に山林に放置されていますが、それは山から下ろすことにコストがかかるので、下ろせないのです。<エコか?>
多くは「カーボンニュートラル」を推進理由のひとつに上げていますが、それは地元での地産地消できる場合の限定された話であり、結局化石燃料を用い長距離運搬した場合、特にガサのある原木輸送の場合には、当然距離に応じたCO2が発生します。
わざわざ生育している木を不必要に伐採して燃やすことは、せっかく炭素固定しているものを大気中に放つだけなので、逆効果です。間伐材などの未利用林産物を利用する場合なども、それと同量のCO2が固定できる樹木の植樹を行わなければ、意味がありません。植樹もカラマツを植えているところもいますが…なぜ、今カラマツ?

◆じゃあどうしたら?(案)
・すでに地元でペレット製造が可能な地域
もう地元に工場があるならばペレット導入も選択肢の一つとしては良いかもしれません。同じ木質資源として薪を使うのであれば、高齢化が進む地方において、労力がかからず扱いやすいペレットを選択する場合もあるでしょう。ですが、いずれにせよ生産量が限定されてしまうので、すべての世帯をという話にはなりません。他の方策も考えていく必要があると思われます。ペレット+薪の併用タイプなどは、将来的なペレット供給のリスクを軽減することもできるかもしれません。

・林材が豊富な地方
直接燃焼による薪ストーブ、あるいはチップボイラーなどが地味ですが効果的だと思います。薪はペレットに比べ水分含量がある程度以下までしか落ちないこと、そして昔ながらの時計型薪ストーブのイメージが強いせいか燃焼効率が悪いと思われがちですが、再燃焼式などを採用している昨今の薪ストーブでは、63%( LabelList of EPA Certified Wood StovesMarch 15, 2006 ただし最大出力の初期値)にも達します。単位重量あたりの発熱量は多いですが、ペレットストーブの燃焼効率は約70%(「市販木質ペレットの燃焼装置との適応性試験」,財.日本住宅・木材センター)であり、大きな違いは見られません。なによりも付近で資源を得られる状態であったら、特に保存可能な木材資源のエネルギー利用においては、距離の離れている施設まで運搬し、加工後それを再度利用のために運搬する、というエネルギーの流れは非効率的であるといわざるを得ません。特に、地元で直接燃焼の要望がある場合には、それを「エコ」のためと他地域へ移出することは、本当の「エコ」でしょうか。
多くの場合薪には、ペレットほど厳密な制限(樹種,部位,異物の混入など)があるわけではないので、供給のキャパが広がるという面もあります。
ただし・・・購入すると高いので、薪の入手、そして薪割り等に労力がかかり、エネルギーは自ら生み出す、との気概がある人以外は難しいかもしれません。

・都市部において(もしくは周辺に林産資源が少ない場合)
木質バイオマスの利用は考えず、家屋の熱の利用効率の向上をまず検討すべきだと思います。それが現実的に一番「エコ」です。


現在、「バイオ」「エコ」と名前がつき、地域,国をあげて検討や実証に取り組んでいます。けれども、結局補助金(税金)を利用した商売のためだけに行っていて、本当に消費者のこと将来のことを考えているのか?と思うことも多々あります。どうしても新事業の創出、次世代のエネルギー施策、となると新しいもの、目立つものしか(多くはマスコミに)注目されませんが、地味だけれども確実な利用方法、そして現在利用しているエネルギーの効率的な利用方法を踏まえたうえで実施しないと、結局補助金の使い捨てで、消費者が取り残される結果となりかねません。そういったことが杞憂に終わってほしいものです。

不勉強なので、ご指摘ありましたらお願いします。

  ryo